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【第8回】災害予防計画は対策の基本

2010.07.04

大規模災害がなくとも計画の見直しはすべき

「災害予防計画」の重要性は災害を未然に防ぐこと、そして災害発生時における被害を軽減することを目的としていることは周知のところである。こうした計画内容と実行性を評価できるのは想定被害が発生した時であるが、実際にはその時まで変更しないことはあり えない。毎年計画の内容と業務を見直し、精度を高め充実させていくことが責務であって、防災関係各担当の重要な業務である。

8月11日午前5時7分、静岡県駿河湾を震源とする中規模の地震が発生した。大規模地震対策特別措置法(1978年)の施行後初めて、想定された震源域内にM6.5の被害地震が発生した。東海地震はM8.0程度を予測しているので、規模からみても約200分の1と小さかったが、室内に積まれた本等の落下とみられる胸腹部の圧迫による窒息死が出た。地震発生の3.8秒後に「緊急地震速報」、3分後の5時10分に伊豆諸島と静岡県に「津波注意報」、そして約2時間後の7時15分に「観測情報」が立続けに発表され、同報無線等を使って即時に広報された。地元防災関係機関は、早朝であったことと伝達機器の不整備も重なり、住民に対して満足な状況とはいかなかった。

今回、初めて東海地震発生との関連を判断できない場合に発する観測情報が7時15分に、9時10分に2回目、6時間後の11時20分に「東海地震の前兆ではないとの判定会の結論」が広報された。人的被害として死者1人、負傷者311人、物的被害が半壊3棟、一部損壊7、773棟であった。特に東名高速道路は焼津ICから袋井ICの上り線路肩が崩壊し、8月15日24時まで全面交通止めとなり経済被害が生じた。

改めて明らかになった予防対策の重要性

異なる内容の情報が立て続けに発表され、伝達方法とその内容が住民に理解されていたのかを検証する良い機会である。

まず「緊急地震速報」は、地震発生に伴って到達する地震動から人命の保護と2次災害防止を目的に発せられる。昨年設けられた情報でまだ充分に理解されていない恐れがあるが、今回は早朝であったことから、テレビ・ラジオ・屋外スピーカーを視聴していた人は少なかったと思われる。

「津波注意報」であるが、津波危険地域の住民は揺れた直後から安全行動に移りたいところである。また沿岸地域をもつ市町村は、津波の発生状況の監視、危険地域住民に対しての避難勧告、警報等の伝達方法の確認等、実施すべき業務は多い。更に状況が変化することもあるので、解除されるまで推移を緊張して見守らなければいけない。

次に東海地震に係る「観測情報」であるが、一昨年静岡県が行った県民の防災意識調査では、一連の情報を詳しい内容まで知っていると回答した人は5.5%で、多くの住民が観測情報の重要性を理解していない。東海地震関連情報の伝達方法と内容の解説を徹底しなければ、せっかくの予防対策の効果は期待できない。

地震後しばらくして住民が取った対策は、瓦屋根の落下を見て地震保険等への加入、水道が断水することを知り改めて飲料水や食料の備蓄を始めたこと、実際に食器戸棚やテレビ・本箱等、家具の転倒や落下を経験し固定化を進めたこと、家庭や近所で避難場所やそれぞれの役割等について話し合われたこと等があげられる。

多くの住民が地震により家屋の損壊や室内でも危険が及ぶことを経験し、自分自身で対策を実施しなければ発生後の生活に支障が出ることを知った。改めて予防対策の必要性を強く認識させることが、防災行政機関における今回の教訓である。

井野盛夫(いの・もりお)
富士常葉大学環境防災学部客員
1937年静岡市に生まれる。61年東京教育大学卒業後、静岡県職員に採用される。工業用水道課、水資源課、地震対策課長を経て92年より防災局長。96 年より静岡県防災情報研究所長。2000年より富士常葉大学環境防災学部。理学博士。

中央防災会議専門委員、地震調査研究推進本部専門委員、静岡県立大学客員教授、兵庫教育大学講師、静岡県講師などを歴任。97年国土庁長官防災功績者表彰。

著書に『こうすれば東海地震はこわくない』『抗震-東海地震へのアプローチ』『抗震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知りたい東海地震』(共著、静岡新聞社)『名水を科学する』(共著、技報堂)『地震予知がわかる本』(共著、オーム社)『地域防災計画の実務』(共著、鹿島出版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備える』(共著、清文社)など。

※本稿はbside2009年10月号[Vol.8]に掲載したコラムを再掲載しています。