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【第7回】災害予防についての計画

2010.07.04

災害対策基本法の主たる目的として、第一に「防災責任の明確化」、第二に「総合的防災行政の推進」、そして第三に「計画的防災行政の推進」、さらに「激甚災害に対する財政援助」「災害緊急事態に対する措置」が位置付けられている。これに対応して地域防災計画は、事前の対応としての「災害予防計画」、災害が発生した時の「災害応急対策計画」、そして「災害復旧計画」と時間軸を基に三つのフェーズで組み立てられている。

「災害予防計画」は災害を未然に防止するとともに、災害発生時における被害の軽減を図ることを目的とし、平素から行う措置について定めている。計画策定にあたってはまず、地域で発生頻度の高い災害を特定する必要がある。一般には河川の氾濫、土砂崩壊、延焼火災、地震動、津波、高潮、地すべり、危険物の流出、火山の噴火、豪雪などを対象として、それぞれの予防対策の内容を計画化する。

河川災害の予防計画は流域全体を考慮する

例えば河川災害の対策としての治水計画は、雨水の排水計画、河川の工作物の管理改修と整備、上流域における森林の伐採、採石あるいは流域一帯の開発によって発生する災害の防止事業などが主な内容となる。複数の自治体を流域に持つ大河川を除き、河川管理者が上下流で異なる場合でも流域全体を考慮した計画としたい。ともすると管内の状況だけから判断するような計画となりがちであるが、上流域での異変が下流での対応に反映されるような内容であるのが望ましい。そのため一貫した流域治水対策計画や総合排水計画、浸水対策計画などの事業については広域で連携がとれたものとする必要がある。また、災害が発生した場合、人命、身体、財産に著しい被害を生ずる恐れがある地域の想定や、異常降雨または河川の水位が上昇したときは、危険地域内の住民への予警報および巡視が迅速に行えるような水位監視システムを明記したいところである。

また、水門や調整池などの防災上重要な工作物の管理者は、平常時から点検整備を十分に行うのは勿論であるが、被害を拡大するような破損個所が見つかった場合には直ちに修理し、危険発生時の水防体制および通信連絡の方法もあらかじめ考慮しておくことも大切である。この業務をおろそかにすると発生時の初期対応に支障が生じ、ひいては二次災害を誘発する恐れがあるので、担当責任者による定期点検をルーチンとして実施することを計画に掲載する。

予報や警報の伝達手段は住民にしっかりと周知する

津波・高潮災害についての予防計画も同じ要領で策定するが、沿岸や湾内に貯木場、牡蠣や海苔、はまちなどの養殖場や棚、係留船など特有の施設や状態がある場合、これらの流出防止策やその作業手順についても触れておく。

津波に関する予警報等を受信した場合の行動として、海岸地域や河口付近のパトロール、潮位・波高の監視などの情報が求められる。津波については地震動を感じたとき、または津波注意報および津波警報が発表されたときに備えて海面状態の監視体制をとることになるが、その海面監視実施要領もあわせて作成しなければならない。津波警報発表時、護岸において測量用ポールで潮位の計測状況がテレビ報道されることがあるが、海面監視者の安全を考えるならば止めるべきで、あらかじめ観測地点を高所に設けておきたい。

災害応急対策は予報や警報からスタートすることが多く、伝達する際に用いられる旗、吹流し、円筒、色燈、鐘音、サイレン音などの標識について住民へ周知すること、各種災害の予防対策実施の担当部署名を明記して住民に公表することも計画作りのうえで配慮したい。毎年すべての予防計画が運用されるものではないので、ある間隔をもって発生することと仮定し、計画内容を例年見直すことを慣例としなければならない。

井野盛夫(いの・もりお)
富士常葉大学環境防災学部客員
1937年静岡市に生まれる。61年東京教育大学卒業後、静岡県職員に採用される。工業用水道課、水資源課、地震対策課長を経て92年より防災局長。96 年より静岡県防災情報研究所長。2000年より富士常葉大学環境防災学部。理学博士。

中央防災会議専門委員、地震調査研究推進本部専門委員、静岡県立大学客員教授、兵庫教育大学講師、静岡県講師などを歴任。97年国土庁長官防災功績者表彰。

著書に『こうすれば東海地震はこわくない』『抗震-東海地震へのアプローチ』『抗震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知りたい東海地震』(共著、静岡新聞社)『名水を科学する』(共著、技報堂)『地震予知がわかる本』(共著、オーム社)『地域防災計画の実務』(共著、鹿島出版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備える』(共著、清文社)など。

※本稿はbside2009年7月号[Vol.7]に掲載したコラムを再掲載しています。