1. ホーム
  2. コラム
  3. 役に立つ地域防災計画の作り方
  4. 【第6回】地域防災計画総論の位置付け

【第6回】地域防災計画総論の位置付け

2010.07.04

一定の本には前書があって、書かれた目的や内容の要約などが添えられているが、地域防災計画においても総論が同じような位置付けである。総論には計画策定上での目的、計画の構成、防災上重要な機関が対処する事項や業務の大網、計画を策定する自治体の概況など、そして予想される災害と地域が紹介される。利用者のために、使用した資料の出典や調査年次を明確にして原典に戻れる配慮を行い、内容は多方面の情報を要領よくまとめて毎年の更新を心掛けたい。

市民の実施すべき防災対策の項目を立てることも有効

目的については、災害対策基本法の規定に基づき「自治体管内における災害の予防と災害時の対策について、自治体及び行政区域管内の防災関係機関の連携のもとに実施する総合的な対策の大網を定めることにより、住民の生命、身体及び財産を災害から守ること」を原則とする。このため当該地域において過去に発生した災害の状況とその措置、そして当該地域に予想される風水害、大火災、大爆発、火山噴火、豪雪、大地震など災害の形態が示される。

計画の構成としては、まず発生頻度が高い風水害や大火災などを一般対策編とし、その地域で特に予想される災害や事故、例えば東海地震のような巨大地震災害、大規模な石油精製基地や天然ガス備蓄基地等の事故、原子力発電所災害、活火山の噴火災害などは別に対処計画を策定することになる。そのため多種類の災害発生を予測する自治体にあっては、一般対策編のほか地震対策編、火山対策編、豪雪対策編、原子力対策編、石油コンビナート対策編など複数の計画を持つ。それぞれの計画にあっては、災害予防計画、災害応急対策計画、災害復旧計画の順序で構成される。

防災上重要な機関が処理する事項や業務の大網の記述は、当該自治体のほか指定地方行政機関、指定公共機関、地方指定公共機関、公共的団体及び防災上重要な施設の管理者等、防災上実施すべき業務について項目を列挙することになる。ここで、市民の実施すべき防災対策の項目を別書きにして、地域住民の防災力を高めるための根拠とすることも考えられる。

計画を策定する自治体などの概況は、地域防災会議事務局の考え方によって差異が生ずる。地勢や地形、地質、気候などの自然的な条件については毎年見直す自治体が少ないが、近年気象状況の変化が大きいので注意を要する。地勢については、平成の大合併により管内が拡大したところは林野面積、可住面積などの構成比を変更し易いが、気象状況の概況を示すことになると、基準面積における月平均気温、月平均降水量などの資料を収集することが困難となり、従来と同じ水準にせざるを得ないところもある。また、地形や地質の記述に当たっては、合併前の調査資料の量と質が異なるため再調査を必要とする自治体もある。気象の項においては、観測項目の種類、観測点の数、観測期間、観測回数など合併によりデータ処理と分析が複雑になっている。特に降水量については、ただちに風雨災害の対応に直結するので、出来る限り多くのデータ収集が求められる。

都市部では新たな危険も想定を

社会的条件として人口、建物、道路、橋梁、鉄道など、当該自治体が都市なのか、農村地域なのかでは記述内容と量が変わる。人口や建物については住民基本台帳登録数や課税対象の家屋数を基礎に、毎年担当部局で発表する資料が利用されるが、これらも毎年見直すことを習いとしたい。最近の都市は高所と地下の空間利用が進み、昼間と夜間の人口格差の拡大、不特定の人々の集中など、計画に盛り込まれていない新たな都市危険が予測される。今後、都市においてはコンコースや広場などにおいて発生する緊急事態を予測し、対応に備えた新たな資料収集が重要な課題となるであろう。

井野盛夫(いの・もりお)
富士常葉大学環境防災学部客員
1937年静岡市に生まれる。61年東京教育大学卒業後、静岡県職員に採用される。工業用水道課、水資源課、地震対策課長を経て92年より防災局長。96 年より静岡県防災情報研究所長。2000年より富士常葉大学環境防災学部。理学博士。

中央防災会議専門委員、地震調査研究推進本部専門委員、静岡県立大学客員教授、兵庫教育大学講師、静岡県講師などを歴任。97年国土庁長官防災功績者表彰。

著書に『こうすれば東海地震はこわくない』『抗震-東海地震へのアプローチ』『抗震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知りたい東海地震』(共著、静岡新聞社)『名水を科学する』(共著、技報堂)『地震予知がわかる本』(共著、オーム社)『地域防災計画の実務』(共著、鹿島出版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備える』(共著、清文社)など。

※本稿はbside2009年4月号[Vol.6]に掲載したコラムを再掲載しています。