1. ホーム
  2. コラム
  3. 役に立つ地域防災計画の作り方
  4. 【第5回】地域防災計画には何が書かれているか

【第5回】地域防災計画には何が書かれているか

2010.07.04

一般法の性格を持つ災害対策基本法

地域防災計画は、昭和36年に制定された災害対策基本法に基づいて作成されている。昭和34年に発生した伊勢湾台風は、太平洋戦争によって疲弊した国土を襲い、全国で死者5千人余、特に伊勢湾周辺で被害が大きかった。台風や高潮によって被害を受けた湾岸地域では、施設の管理責任のあいまいさ、縦割り行政の弊害が目立ち、災害復旧に時間を要した。防災体制の不備な点を補い、従来の法律を一本化して責任の所在を明確にし、新たに生じた事象に対して総合的かつ計画的な防災行政の整備を図る新しい法律の制定が求められた。結局、災害対策基本法は足掛け3年の時間を要して成立し、同年11月に公布されたのである。法律の精神として、新たな事象や対策手法、関係法令の改定などがあれば逐次変更することとなっていて、他の災害対策関係の法律に対しては一般法の性格を持つものである。

基本法に基づく防災基本計画の内容は地域防災計画に反映される

防災基本計画基本法に基づいて中央防災会議が防災基本計画を策定しているが、これらの計画は地域防災計画に反映される内容である。昭和38年に防災基本計画が策定されたが、内容は逐次、公共機関、地方公共団体等に通知されて、全国同じ考え方で防災対策を進めるように定められている。基本計画は風水害が法制定の誘因となったことから、その後に発生した昭和43年5月の十勝沖地震による被害状況等や各地域に整備され始めたコンビナート施設に対する安全対策については、全面的な修正が行われた。更に全面修正を余儀なくされたのは平成7 年1 月の阪神・淡路大震災であった。大震災の教訓から、国、公共機関、地方公共団体、事業者等それぞれの役割を一層明確にし、具体的かつ実践的な内容に修正された。後に平成11年9 月のJOC 東海事業所のウラン転換試験棟において発生した臨界事故は新たな教訓を生み、原子力災害対策編の全面修正が行われた。また、新たに原子力災害対策特別措置法が施行され、法に合わせた修正が行われている。

地域防災計画の見直しは地域性を考慮し、十分に検討

地域防災計画は地域の災害対策推進の中心であるが、防災基本計画では自然災害として震災、風水害、火山災害、雪害、また海上、航空、鉄道、道路、林野、原子力、危険物、大規模火災等で生ずる事故災害対策を独立した項目に立てている。これらの災害を全て計画として扱うこととなると、広範になり地域住民にとって必要の無い事項も含まれることとなる。小規模な地方公共団体において新たな事項について計画化する場合、得てして通達された内容を理解しないまま計画化する例をみかける。例えば海洋に接しない地方公共団体が津波対策を掲載して避難所の設定や避難路を記載してある例、過去に非常に稀な航空機の空中衝突や列車の正面衝突を経験したために、現在も航空災害や鉄道災害を計画化してある例、原子力発電所が管内に無くても計画を持つ例など、通達や要領をそのまま準拠し地域性を考慮しないために生ずる矛盾や発生が稀な事故を想定して計画するために現実と遊離することがある。

毎年地域防災計画を見直すことになっているが、軽微な事項については防災会議に掛けなくても良いことから、次第に数年開催しないことを常とする団体も見受けられる。新たな計画掲載事項は関係する部局が意見を交わし、十分に検討する時間を設け、責任と方法を明確にする内容にまとめることが防災会議担当事務局に課せられている。

井野盛夫(いの・もりお)
富士常葉大学環境防災学部客員
1937年静岡市に生まれる。61年東京教育大学卒業後、静岡県職員に採用される。工業用水道課、水資源課、地震対策課長を経て92年より防災局長。96 年より静岡県防災情報研究所長。2000年より富士常葉大学環境防災学部。理学博士。

中央防災会議専門委員、地震調査研究推進本部専門委員、静岡県立大学客員教授、兵庫教育大学講師、静岡県講師などを歴任。97年国土庁長官防災功績者表彰。

著書に『こうすれば東海地震はこわくない』『抗震-東海地震へのアプローチ』『抗震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知りたい東海地震』(共著、静岡新聞社)『名水を科学する』(共著、技報堂)『地震予知がわかる本』(共著、オーム社)『地域防災計画の実務』(共著、鹿島出版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備える』(共著、清文社)など。

※本稿はbside2009年1月号[Vol.5]に掲載したコラムを再掲載しています。