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【第1回】「平成の大合併」と地域防災計画

2010.07.04

「平成の大合併」の内実とは

自治体の財政難を背景に、行政能力の強化を目的として「平成の大合併」が進められた。古くは明治22年の市町村制への移行(「明治の大合併」)、さらに昭和28年から31年にかけての「昭和の大合併」があった。そして今回の平成17年までに行われた「平成の大合併」は行政改革とともに、人口1万人以下の自治体をなくすことが目標とされた。

平成11年に3,232あった市町村は18年3月現在1,821(市777、町村1,044)に再編成された。確かに合併の影響で人口1万人未満の町村は半減したものの、その内実は厳しい。平成17年国政調査によれば、合併前後の同じ領域で5年前との人口の増減をみると、人口が減少した市町村が全体の7割を占めることとなった。65歳以上の総人口に対する比率(高齢者人口比率)は19.5%となり、多くの市町村では領域内の人口の減少と高齢化が進行して、災害時には幼児、障害者、外国人を含めた要援護者への支援体制が新たな課題となった。

防災行政面でも広がる地域間格差

地方分権時代の到来ということで、地方自治体は自らの判断と責任のもとに、地域の特性を生かした個性豊かで活力の満ちたまちづくりの実現が強く期待されている。また、市民生活においても多様な行政ニーズが求められ、自治体の財政状況はかつてない厳しさに直面し、より一層効率的な行政運営と強固な財政基盤を求められることとなった。

大都市では人口や産業が集中し、行政需要が多くなり市民生活にかかわり合いの多い社会福祉、保健衛生、都市計画の決定などの事務に加え、知事の持っている許認可などの業務が移行され規模が拡大してきている。一方、人口が1万人以下の小規模自治体では人口が減少し、地方税収入が減少して財政規模が小さくなり、総合的な行政サービスを続けることが難しくなっている。防災行政の面でも大都市と小規模自治体の格差が拡大し、小規模自治体が合併しても新しい自治体の中心から離れた周辺部となると、定住化率が下がって自主的な防災組織の運営も難しくなっているところがでてきた。

合併後に噴出する多くの課題

合併により自治体の面積が拡大したことにより、危機管理体制を一律に保つことが難しくなった。例えば住民へ情報を一斉に伝達する手段として位置づけられている防災無線の同報系は、自治体が固有の周波数を与えられて運用してきたが、合併による周波数の一本化が難しくなっている。いずれアナログからデジタルに変更する際に、統一したシステムを構築することで整備を先に譲るところもある。

その他合併後の本部支部体制の構築、新本部庁舎の建設と施設整備、防災施設整備の統一化、合併前にそれぞれが交わした相互支援協定の更新、避難地や救護所等の再配置、自主防災組織育成の方針など合併によって新たな計画作りが求められている。新たな地域防災計画のあり方とともに、最新技術にかかわる事項についての対応もこれからの課題である。

合併を経ることによって、改めて明らかになった防災行政の課題は数多い。本連載では、合併後に必要になる地域防災計画の改訂作業のポイントを概説しながら、これらの課題解決の糸口を見出していければと思っている。具体的には、事前対策・応急対策・復旧対策の各面について、住民の目線に立った効果的な危機管理のあり方を考えたい。

井野盛夫(いの・もりお)
富士常葉大学環境防災学部客員
1937年静岡市に生まれる。61年東京教育大学卒業後、静岡県職員に採用される。工業用水道課、水資源課、地震対策課長を経て92年より防災局長。96年より静岡県防災情報研究所長。2000年より富士常葉大学環境防災学部長。理学博士。

中央防災会議専門専門委員、地震調査研究推進本部専門委員、静岡県立大学客員教授、兵庫教育大学講師、静岡県講師などを歴任。97年国土庁長官防災功績者表彰。

著書に『こうすれば東海地震はこわくない』『抗震?東海地震へのアプローチ』『抗震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知りたい東海地震』(共著、静岡新聞社)『名水を科学する』(共著、技報堂)『地震予知がわかる本』(共著、オーム社)『地域防災計画の実務』(共著、鹿島出版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備える』(共著、清文社)など

※本稿はbside2008年1月号[Vol.1]に掲載したコラムを再掲載しています。